健康は口の中からつくられる!

歯や歯ぐきをよく知ってより健康に美しくなろう 歯ぐきの腫れ、虫歯、かみ合わせをあなどるな!

「歯は健康のバロメータ」とか「歯が健康な人は元気にツヤやかに過ごせる」といわれます。つまり、美と健康は密接につながっているのです。「ちょっと歯の調子が…」となる前に、あなたの口の中を、さあ、チェック!


ちょっと聞いてよ! 口の悩みアラカルト

新年会で部長がフグを奮発してくれた。でも、そのとき私は歯ぐきが腫れて、歯もグラグラ。フグ刺しの弾力に耐えきれず飲み込むしかなかった。残念…。あーッ、フグを思いきりかみしめたい!(34歳女)
口が臭うと女房にいわれ、夜の生活を拒否され続けてもう3年。歯周炎だとは思うけど、女房の仕打ちはあんまりだ。絶対、フーゾクに行ってやる!(40歳男)
若いころから歯ぐきから出血していた。いま29歳だがすでに歯が5本抜け落ちた!(29歳女)
仕事が忙しいときに限って虫歯が痛くなる!(31歳女)
憧れの課長が「僕、上の歯総入れ歯」っていってた。36歳なのに…思わず引いた(27歳女)
歯医者にかかって6年。歯が6本抜けた。1年に1本かよ、ヤブ医者め(42歳男)
口を開けるとカクンカクンと音がした。そして、口が開かなくなった(26歳女)
かかりつけの歯医者は腕がいいのか歯を抜くとき痛くない。でも、もう8本も抜いている。これって、やはり腕がいいの?(32歳男)
冬のボーナス60万、すべて歯科医院に吸い取られた(35歳男)
親知らずの虫歯に悩む夫が「安月給だから歯医者に行けない」と泣いている(43歳女)
電動歯ブラシで毎日せっせと歯をみがいていた。たしかに歯はツルツルになったが歯ぐきもえぐれた(32歳男)


歯や歯ぐきは全身にビミョーな影響を与えている

少し前のことですが、あるTVコマーシャルの「芸能人は歯が命」というコピーが流行しました。でも、歯が命なのは芸能人ばかりではありません。私たちフツーの人にとっても命です。たとえば、歯周炎にかかり症状が進むと、歯が抜け落ちるだけではなく、命にかかわる病気を引き起こす可能性も出てきます。また、虫歯やちょっとしたかみ合わせの狂いが全身の不調につながることもわかっています。つまり、より元気に、より美しく生きるためには口の中の健康が欠かせないというわけです。
さあ、あなたも、「人に言えない口のトラブル」を抱える面々のようになる前に、この特集を参考に、口の中のメンテナンスを心がけてみませんか。そして、口の中も、体も、より健康的な毎日を送りましょう。

虫歯の原因となる細菌
虫歯の原因菌は空気の中(好気性細菌)で悪さを働く。代表はストレプトコッカス・サングウス、ストレプトコッカス・ミュータント(通常、ミュータンス菌といわれている)など。


歯周炎を引き起こす細菌
歯周炎の原因菌は空気を嫌う(嫌気性細菌)ため、歯周ポケットの中で活発に悪さを働く。代表は、スピロヘータ、プルフィロモナス・ジンジバリース、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンスなど。




歯周炎

歯周炎が進行すると歯が抜け落ちるだけじゃなく、心筋梗塞や早産の原因になるといわれています。歯周炎…あなどれませんよ!


歯周炎は全身の血管障害を引き起こし、心臓病や脳硬塞の原因になっている

「歯周炎?ああ、リンゴをかじると血が出るヤツね。でも、あまり気にしてないな…」と軽く考えている人はいませんか?
たしかに、初期のころは痛みもないし、それほど気にならないかもしれません。でも、実は、歯周炎が進行すると、歯が抜け落ちるだけではなく、全身にさまざまな悪影響を与えます。たとえば、歯周炎の原因菌が毛細血管から全身の血液の中に入ると、頭痛、倦怠感などの全身の不調を引き起こすほか、心筋梗塞、狭心症、脳血栓、脳硬塞など命にかかわる重大な病気の発症にも関係しています。心筋梗塞で亡くなった方の血管内の血栓を調べると、そこから歯周炎菌が発見されたという報告が数多く寄せられています。
東京歯科大学水道橋病院の森山貴史先生は、「歯周炎菌の一部は悪玉コレステロールを血管壁に付着させる可能性があり、このため血栓を作り、動脈硬化を進行させます。そして、この血栓が心臓の冠状動脈に起きれば心筋梗塞などの重大な病気につながるのです」と話しています。


早産や未熟児出産の原因にもなるから妊婦さんは注意して!

森山貴史先生
東京歯科大学水道橋病院保存科・歯周病科講師。日本歯周病学会認定医、日本歯科保存学指導医としてテレビ、雑誌で歯周炎予防の啓蒙活動を行っている。

また、歯周炎菌は女性の健康と出産にも大きな影響を与えています。月経時や、妊娠期にさかんに分泌されるエストロゲンという女性ホルモンがありますが、歯周炎菌はこのエストロゲンを栄養にして、体内で増え続け“悪さ”を働きます。とくに、歯周炎の女性が妊娠すると、歯ぐきの健康な人に比べて未熟児出産や早産を起こす確立が非常に高まるといわれています。
あなたは、それでもたかが歯周炎といえますか?細心のご注意を!



歯周炎の危険率
ある研究によると、歯周炎による早産、未熟児出産の確立は歯ぐきが健康な人の7倍、また、定期的な飲酒者の3.5倍、高齢者出産の2倍にもなるといわれている。また、心筋梗塞の確立も3倍に跳ね上がるとの報告もある。


脳血栓・脳硬塞
歯周炎の細菌が血液内に入り込むと、血小板がかたまって小さな固まりをつくります。そして、それが血管内を流れ、脳の細かい血管につまると脳血栓や脳硬塞を引き起こす可能性もあります。


誤えん性肺炎
人間がものを飲み込むとき、喉頭蓋(こうとうがい)というフタが気管に食物が入るのを防いでいます。しかし、体の反射力が低下すると気づかないうちに飲み込んだものが肺に入り込み肺炎(誤えん性肺炎)を引き起こすことがあります。この肺炎の病巣から歯周炎の細菌が見つかったという報告もあるので、とくに、お年寄りは注意してください。


細菌性心内膜炎など
人間には細菌に対する防御システムがありますが、心臓の弁に障害がある人や人工弁を入れている人は、弁のまわりの血液がスムーズに流れなくなり、滞ってしまうことがあります。するとこの部分では防御システムが働かず、細菌が心臓の内膜に住み着き心内膜炎を起こします。また、歯周炎菌によりできた血小板の固まりが心冠動脈につまると心筋梗塞など多くの心臓の病気を引き起こします。


全身の血管障害
歯周ポケットで増えた細菌が歯ぐきから血液に入り込むと、動脈壁にくっつきます。すると、体の防御システムがその細菌を追いだそうとし、その過程で動脈硬化症を起こすと考えられています。全身の血管に細菌が広がれば体のいたるところで、血管障害が起こることも考えられます。


糖尿病
歯周炎の細菌が血液に流れ込むと、体の細胞を刺激してさまざまな活性物質をつくらせます。そのなかのひとつ(TNFα)が、すい臓から分泌されるインスリンの働きを弱めることがわかってきました。インスリンの働きが低下すれば、血糖値が上がり糖尿病になりやすくなります。また、現在、糖尿病の人に歯周炎があると治りにくくなります。


早産・未熟児出産
母体内の赤ちゃんは、羊水の中にある「プロスタグランジン」という物質が一定の量になったときに生まれます。一部の歯周炎の原因菌が体内に入ると女性ホルモン量が3倍に増加し、羊水の「プロスタグランジン」が急増し、一定量に早く達してしまうのです。その結果、子宮が収縮して早産につながると考えられます。




推定患者9000万人!!歯周炎の恐怖

初期のころは自覚症状すらない歯周炎。でも、進行すると激しい痛みにおそわれます。そうならないための予防法とは…


口にひそむ一兆もの細菌が歯の周囲の組織をこわし、歯が抜け落ちる

総入れ歯なら歯周炎にかからない?!
「もし、すべての歯がなくなれば歯周炎は治るのかなぁ…。総入れ歯にしようかな」と歯周炎に長年悩んでいる人が言っていました。なんとも切実な話ですが、森山先生は次のように話します。「歯がすべて抜け落ちれば歯周炎は存在しません。なぜなら、口の中には300種以上の細菌が生息し、口の手入れのいい人で500億、ふつうで2000億、手入れが悪ければ1兆もの細菌がいます。それらの細菌が増殖し、プラーク(歯垢)や歯石をつくり、歯と歯ぐきの間の歯肉溝(歯周ポケット)という小さな溝に入り込みます。歯周炎もそのなかのひとつの細菌が原因の病気ですから…」
つまり、歯がなくなれば、歯周ポケットもなく、歯周炎自体が存在しなくなるというわけです。でも総入れ歯にしては元も子もありません。そうならないためにも歯周炎のメカニズムや予防法を知ってください。


激しい痛みをくり返し、やがて歯が抜ける

前ページの写真を見てください。健康な歯ぐきと重度の歯周炎の歯ぐきでは、歯槽骨の状態があきらかに異なっています。これは歯周炎が進行し、細菌が歯周ポケットを広げ、さかんに悪さを働くことで、最後には歯槽骨が溶けて歯が抜け落ちるまでの過程を示しています。ここまでくるには、何度も激しい痛みを感じたはずです。
では、このやっかいな歯周病はどのように防げばいいのでしょうか?
歯周炎は口の中の細菌が原因ですから、徹底的にその歯を駆除するしかありません。ただ、いまのところ口の細菌を一気に駆逐する方法は残念ながらありません。したがって、毎日の丹念な歯ミガキ(ブラッシング)が大切です。次ページを参考に毎日歯みがきに励んでください。また、かかりつけの歯医者さんをつくるようにしてください。そして、定期検診を受け、歯周病を早期に発見し、治療をすれば比較的治りやすい病気です。森山先生は「歯医者から遠のけば遠のくほど歯周病は進行していきます」と話しています。


喫煙者の多くが歯周炎にかかっている

また、喫煙者の多くが歯周炎といわれるほど喫煙は悪影響を及ぼします。歯周炎にかかっている人や、左の危険度チェックで心配になった人はぜひ禁煙を。さらに、糖尿病や過度のストレスなどがあり、体の抵抗力が落ちると症状を悪化させますし、栄養バランスが悪いとやはり歯周炎にかかりやすくなります。ふだんから、バランスのよい食生活を心がけてください。


歯周炎危険度チェック

1 朝起きたとき口の中がネバネバする 1点
2 口臭があるといわれた 1点
3 食事のあと歯の間にものがはさまる 2点
4 歯肉から出血することがある 3点
5 歯肉が腫れることがある 4点
6 ぐらつく歯がある 5点
7 あまり歯みがきをしない 1点
8 タバコをよく吸う 1点
9 歯科医院には歯や歯ぐきが傷むときしか行かない 1点
10 ストレスを感じることが多い 1点
11 糖尿病にかかっている 1点
12 骨密度が低いといわれたことがある 1点
判定
0点 歯周炎の心配はありません。ただ、油断は禁物。歯周炎の初期はほとんど自覚症状がないので歯みがきを欠かさず、定期的に歯科医院でチェックを。
1~4点 歯周炎になっているか、かかりやすい要因をもっています。歯みがきと定期検診を忘れずに。
5~9点 歯周炎にかかっている可能性大。歯医者さんに行ってください。歯みがきもしっかりと。
10点以上 歯周炎がかなり進行している可能性があります。必ず歯科を受診し、毎食後、ていねいな歯みがきをしてください。

大人は誰でもかかっている!
厚生省労働省の歯科疾患実態というデータによると、日本人の30~50代の80%の人が歯周炎にかかっているそう。つまり、歯周炎は日本人の「国民病」といえそうだ。


タバコは歯肉の大敵!
ニコチンは歯肉の血液循環を悪化させ、白血球の免疫機能や治癒力を弱める。さらにニコチンは接着剤のように歯に歯垢を付着させる。百害あって一利なし。





しゃきっと 2003年05月号より


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  • 院長: 波多野 一
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