喫煙が及ぼす歯と歯茎への影響

吸わない人と比べ重症の歯周病「一度にやめるのが理想的」

からだによくないと思いながら、なかなか止められないのがたばこ。昨年十二月に価格が値上がりし、今度こそと禁煙を決意した人も多いだろう。喫煙が身体へ及ぼす影響はいろいろと研究されているが、案外と知られていないのが歯と歯茎への実害だ。米国などを中心に近年、研究が進み、注目が集まっている分野だが、喫煙者の歯周病は吸わない人に比べて重症で、高齢者になるほどその影響は強くなることなどが分かっている。喫煙によってどのようなことが口のなかで起こっているかを知ることは、禁煙の手助けになるかもしれない。

(高梨美穂子)



日本歯科大学の鴨井久一歯学部付属病院長(歯周病学)は、喫煙と歯周病の関係について研究し、多くの論文を発表している。喫煙による影響を尋ねた。
「喫煙は熱い煙を吸って、歯茎がやけどをしてしまうことと同じです。歯周病の大きな原因になって、ひどい場合には歯茎がやせ細り、歯が抜けてしまうこともあります」と、深刻な影響があることを訴える。
たばこを吸うことによって、まず目に見えて表れてくる影響は、タールなどのヤニが歯の表面にこびりつくこと。この部分には、虫歯などの原因になるプラーク(歯垢)が沈着しやすくなる。意外なことに前歯よりも臼歯に汚れが多くこびりつくが、これは煙が上あごの奥の方へ入っていくことによって起こるそうだ。「上あごの奥が刺激にさらされることが多く、この部分の歯がなくなっている人の割合が多い」という。
さらに、煙の温度も歯肉に影響を与える。喫煙者の歯肉は一般の人よりも乾燥する傾向があり、かなりやせた状態になっていることが多い。ロール状にめくれ上がっていることもある。歯と歯の間が水分を含んでいるような場合は要注意。「これは歯茎がやけどにあった状態といえます。歯と歯の間に浸出液が出ている状態で常に炎症を起こしているわけです。」
このため鴨井院長は「手元までしっかり吸ってしまうと、当然口内に入ってくる煙の温度も上がる。吸うならば、なるべくたばこの先だけ吸うように」とアドバイスする。


人体の免疫力減退も 高齢や病気とともにトラブル進行も加速

そして、最も深刻な影響を与えることは、歯周組織の二つの免疫機構に変化を起こすこと。一つには「病原菌の感染に抵抗する体の生体防御システムが傷つけられ」、二つ目に「周囲の健康組織を破壊する方向に作用する、私たちの体の応答システムが過剰に刺激される」ことだ。
ニコチン、シアン化合物、そしてタール、一酸化炭素をはじめとする二千を超える有毒物質が煙のなかにはあることが知られており、これらの物質が歯茎などから吸収され、歯周組織の免疫機構を変化させたり、創傷治療の遅れを引き起こす。
また、たばこの煙のなかの物質が体の外敵に対して戦う、白血球中の好中球やリンパ球の機能を減少させることがわかっている。
「最近治療が行われることが多いインプラントでは、骨へのニコチン吸収が大きいなど、特に喫煙者のリスクは大きくなっている」と鴨井院長。
元気だと思っていても、病気や高齢になったことで体が弱り、免疫機構が崩れていると、歯周病は急激に進行。ごっそりと歯が抜けることもあるという。
「ごく最近の考え方では、歯や口腔と全身の健康は密接な関連があるといわれています。高齢者でも歯が多く残っている人ほど記憶力がしっかりとしている。また喫煙は歯に汚れを付着させるだけではなく、“壊死(えし)させる力”も持っている。やめるなら、一度にスッパリとやめるのが理想的です」と話している。

ブラッシング 禁煙に効果的

開業医・田中さん

東京都文京区で歯科医院を開業する田中久雄さん(61)は、インターネットで禁煙挑戦者を募集し、昨年から“禁煙マラソン”を行っている。
禁煙を進めるには、いろいろな方法があるが、まず手軽にできて効果的なのが歯ブラシによる“ブラッシング禁煙法”。「こまめに一日何回もブラッシングをやること。そうすれば、ヤニがついたら気持ちが悪くなるので、だんだんと吸いたくなくなりますよ。」
そのほか、濃いお茶を飲む、ガムをかむ、深呼吸をする、手指関節の屈伸、梅干しを食べるなど、喫煙の代替行為を決めて「喫煙すると気持ち悪くなる」などと自己暗示をかけるのも一つの手だという。


産経新聞 99年02月03日 朝刊 14面より




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