からだにやさしい金属のお話

1.なぜ貴金属合金をおすすめするのか?

患者様の口腔内の治療には様々な方法がありますが、患者様とお話をさせていただきながらその中で最も良いと考えられている方法で治療を行います。合金を使って治療することが決まった場合、患者様とお話をさせていただき「貴金属合金」を使うことをおすすめしていますが、その理由は次の通りです。



金を主体として貴金属合金は、化学的に安定しているからです。

貴金属合金はいろいろな種類の食べ物、飲み物や薬などを噛み砕く、混ぜる、飲み込むといった作業を行う口の中で使われている材料として優れています。 口の中で変質せず、からだに害を与えることが非常に少ない性質をもっている材料だからです。 貴金属合金は、素材そのものが化学的に安定しているからだにやさしい材料です。



貴金属合金は加工がしやすく、精度が高いからです。

人類は金を過去3000年以上もの間使い続けてきました。それは、化学的に安定しているからだけではなく、加工しやすい材料であるからです。 現在でもコンピューターや携帯電話などの重要な部品に金が使われているのはそのためです。 治療で使用する合金を歯にかぶせる場合は、合金でできた部分を歯に精密に適合させる必要があります。 そのためには、加工しやすく、歯にぴったり適合する貴金属合金が理想的です。



種類の異なる貴金属を混ぜて合金にします。

金だけでは軟らかすぎて食べ物を噛んだときに変形してしまいます。 加工しやすくても変形してこわれてしまうのでは問題があります。 そこで、白金、銀、パラジウムなど他の金属を混ぜて天然歯に近い性質を持つ合金にする必要があります。 また、合金の結晶構造を緻密にして強さを出す目的や、他の材料と結合させる目的で微量の銅、イリジウム、イソジウムなど数種類の金属を混ぜる こともあります。 加工がしやすく、丈夫で、化学的に安定しているという条件を兼ねそろえた貴金属合金が歯科治療に適しています。



金を主体として貴金属合金は天然歯に近い性質をもっています

治療する歯にとても硬い材料を使うと、場合によってはかみ合わせの反対側の歯を痛めてしまうことがあります。 金を主体として貴金属合金は適度に患者様自身の歯となじむので安心です。





2.セラミック焼付け用合金(メタルボンド用合金)について

セラミックは、 天然歯の色調や質感をより自然に再現することができ、口の中での変色や磨耗がなく、からだにも やさしい材料です。そのセラミックを七宝焼きのように、土台となる専用の合金にしっかり焼付けて結合させて強度を出すことが 大切なので、当院ではセラミックを使う治療につぎの理由で貴金属合金を使用しています。



セラミックとは?

セラミックは生体親和性の高い、つまりからだにやさしい材料の一つです。しかも、プラスチックのように時間の経過とともに色調が変わってしまったり、 擦り減ったりすることがない優れた材料です。


セラミックと貴金属合金の相性について

性質の異なるセラミックと土台の合金を十分に結合させるには、お互いの相性がとても重要になり、特別な専用の合金が必要になります。金などの貴金属を主体とした特別な専用合金は、セラミックとの相性がとてもよく、セラミックと十分結合し、長持ちすることが長い経験からわかっています。


セラミックを結合させる専用合金も適合することが大切です

セラミック焼付け用合金の場合でも、かぶせる歯にぴったり適合させることが必要です。 セラミックを焼付けて結合させる合金の場合も、貴金属合金を使うと患者様の歯に適合しやすくなるという特徴があります。
土台となる貴金属合金全体をすべてセラミックで覆ってしまう方法や、合金の一部を露出して一部だけをセラミックで覆う方法がありますが、 患者様の状況に応じて判断して設計します。 露出した合金の表面が反対側のかみ合わせる歯を接触する場合、貴金属合金は患者様のかみ合わせの歯を痛める危険性が少ないといわれています。


3.金属アレルギーについて

アレルギーに対する関心が高まっています。歯科の分野でも、金属アレルギーが原因で治療を受けられる患者様もいらっしゃります。


金属アレルギーとは?

花粉、ダニ、植物など、数多くのアレルギー源がありますが、金属が原因となるアレルギーを金属アレルギーといいます。 金属のアレルギーとしては、ピアス、ネックレス、時計などの金属装飾品や口腔内の金属があります。 金属が接触している部分に炎症や湿疹ができることが多いですが、原因となる金属から離れた場所にできることもあります。



どうして金属アレルギーが起こるのか?

口腔内のpHの状態やガルバニー電源によって溶け出した金属イオンが体内に取り込まれると、特定の蛋白質と結びついて抗原になります。この抗源は体内異物としてからだによって認識され、再び同じ金属イオンが体内に取り込まれるとリンパ球の攻撃を受けることになります。この結果、皮膚や粘膜などに炎症やかゆみなどの症状が出ることがあります。


金属イオンの溶出とは?ガルバニー電流とは?

口腔内のpHには個人差があります。 食物などによって口腔内が長時間酸性状態を保つと、金属は次第にイオンとなって溶け出します。 また、口腔内にいろいろな種類の金属があると、異種金属間に電位差を生じ。イオンになりやすい金属が溶け出しやすくなります。 この電位差によって流れる電流のことをガルバニー電流といいます。金や白銀などの貴金属は、イオンになりにくい安定した金属元素です。



パッチテストとは?

混ざりものがない純粋な金属を溶かして溶液を作り、それを小さな布に吸わせて皮膚に貼り付け、どの金属によって炎症が起こるかを調べます。 このテストのことをパッチテストといいます。このテストによって、その人のアレルギー源をつきとめます。ひとによってはどのような金属にもアレルギーを起こすことがありますが、一般的には金や白銀などのいわゆる貴金属を多く含んだ合金ほど アレルギーを引き起こす可能性が低いことが知られています。



4.バイオ合金について

当院では必要に応じて金属アレルギーの患者様に、貴金属とからだにやさしい金属のみで作られたバイオ合金を使用することがあります。


バイオ合金とは?

①腔内のpHに左右されず耐腐食性に優れ、イオン溶出が少ない合金です
②金、白金を多く使用した、ひとのからだにやさしい金属元素のみで作られている合金です
③ 純度の高い金属元素で作られている合金です
④ ひとの歯に近い硬さを持つ合金です

これらのすべての条件をみたしている合金をバイオ合金とよんでいます。
バイオ合金は、金属アレルギーを持つ患者様の治療に効果的であることがこれまでの臨床実績で確認されています。



5.歯科用合金の品質について

当院では、高度な品質管理のもとで製造されている信頼性の高いしか専用の貴金属合金を使用して患者様の治療を行っています。 世界中の歯科治療先進国で使用されている貴合金なので、安心して治療に使用することができます。 このメーカーのすべての歯科用合金は、厳格な品質管理を要求されているCEマークの基準にもとづいて製造されていることが保証されています 同時に、ISO規格、DIN、およびEN規格といった世界的な標準規格にも適合しているので安心です。 これらの厳格な品質規格をクリアしたシステムは、すべての製品開発・設計部門から製造、営業部門、さらにサービス部門にいたるまで を管理する総合的なシステムです。


6.歯科用合金のメーカーについて

当医院で使用している歯科用貴金属合金は、信頼あるドイツの歯科機材メーカーでつくられています。歯科分野以外の最新技術も応用した製品を世界に提供しているトップメーカーで作られている貴金属合金です。このメーカーは、ドイツ・フランクフルトの西に位置するグリム兄弟の生地、ハナウという街にあります。今から150年以上も前から貴金属の精錬に取組み、はじめて白金の精錬に成功した貴金属の老舗です。グループ5社で構成されていますが、歯科用製品だけでなく、他の分野の工業用材料の研究、開発、製造も行っており、その規模と技術水準は世界のトップレベルにあります。貴金属を中心としたこのグループ5社の製品は、自動車、半導体などの情報技術、通信、製薬、科学、窯業などの 幅広い分野で使用されていますが、歯科用製品同様、中間原材料として使われているので患者様にはなじみがないかもしれません。しかし、姿をかえて様々な日常の生活の中でつかわれています。例えば、米国のアポロロケットで月に運ばれ、宇宙船飛行士によって地球との正確な距離を測定する実験が行われたことを 覚えていらっしゃいませんか?あの距離測定装置(レーザー光反射装置)には、このメーカーのクォーツグラスで 作られた反射板が使われていました。このクォーツグラス製品や光学製品は今日の情報通信になくてはならない製品となっていますし、その技術は歯科用製品にも応用されています。グループ各社がお互いに情報・技術を交換しながら自社の製品開発に生かせることがこのメーカーの強みです。当医院では、長い経験と革新の技術を背景にしたメーカーで開発、製造されている歯科用貴金属合金を患者様の治療に使用しています。





資料提供:ヘレウス クルツァージャパン株式会社


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