今月の特選シネマ 「シッコ」―医療の近未来

マイケル・ムーア監督作品


映画はクローズアップに映し出されたブッシュ大統領のアップの演説シーンから始まり、暗い画面に張り付いた「Do so mething 何かやらねば」という強いメッセージで終わる。
アメリカの民間保険会社は保険料に応じ、疾病や障害ごとにさまざまな給付契約を行っている。契約外の病気や障害になれば、医療費の自己負担で破産してしまう人も出てくる。
保険に入っている人でも、必要な癌の治療が受けられない。切断した三本のうち二本の指は生ゴミで捨てなきゃならない。医療費が払えないと身体ごと路上に捨てられちゃう。そんな非人道的なことがアメリカでは起きている。
5年前の9.11の消防士の英雄たちやボランティアたちが埃と煙りの中で働いた。多くの人が肺繊維症に罹った。歯もだめになった。讃えられた英雄たちも、自己責任を基調とするアメリカではきちっとした医療を受けられない。ボロボロになった歯の治療に180万円も負担がかかった。皮肉なことに、テロを起こしたアルカイダたちはグァンタナモ収容所に収監されている。ここでは医療は無料で提供されている。
素朴な疑問を軸にして、「利潤の最大化」を目指すアメリカの民間保険会社に執拗にメスをいれて行く。
アメリカの民間保険は1971年ニクソンが手を貸しHMOが出来た。
保険会社は「アメリカにソーシャライズドメディスン(Socialized medison)を」と叫ぶヒラリー・クリントンに莫大な献金攻勢をかけて、潰しにかかった。
病気持ちは保険に加入させない。優秀なヒットマンHitman(審査員)を雇い、必要な医療かどうかは医者が決めるのではなく、民間保険会社が決める。不確定の治療には「実験的医療だ」と決めつけて支払いを拒否する。
ムーア監督はエルサドバドル、カナダ、イギリス、フランスを訪れ、医療、暮らし、国のありようを紹介する。
アメリカのもっとも嫌いな社会主義国、保険証というもののないキューバへ医療ツアーを企画する。
日本でも公的保険を縮小し、アメリカのように生命保険会社に現物給付を認めようとしている。
「シッコ」の映画としての出来ばえは別にして、メッセージ性の強さは観る者に「命とは何か」「医療とは何か」「患者にとっても医療従事者にとってもよい医療制度は」「自己責任と社会責任のバランスはどうあるべきか」を改めて考えさせてくれる。
この手の映画は賞味期限が切れると観る気が薄れますので、早めにご鑑賞下さい。(マサシ・ブンバ)




2007年10月1日  東京歯科保険医新聞


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