肌のシミ取り・歯を美白……外見磨いて仕事に自信

働く30─40代中心 整形には抵抗感も

いつの間にか増えた顔のシミ、白さを失った歯……。自分の容姿の小さなコンプレックスを解消しようと、三十~四十代の仕事を持つ女性を中心に審美治療が人気だ。健康保険の適用外なので費用はかさむが、治療を受けた女性たちは、自信を取り戻し、仕事にも前向きに取り組めるようになったと口をそろえる。職場でのキャリア蓄積と同じくらい外見磨きに力を入れる女心を追った。

白沢みきさん(36)はこの三月末に長年勤務した東京都内のテレビ局を退職し、フリーのジャーナリストになった。決心のきっかけの一つは、肌のシミや小じわを薄くするフォトフェイシャルと呼ばれる光線療法を受けたことだった。
白沢さんが同療法を受け始めたのは昨年秋。以来数回の施術で肌の状態がよくなり、それにつれて「自分自身が活性化していくような気持ちになって、新しいことに挑戦しようという意欲がわいた」という。
フォトフェイシャルは一九九八年、米国で開発された抗加齢療法。広域の波長の光を顔に当て、皮膚のハリを保つのに必要なコラーゲンを再生させる内容だ。費用は一回五万円程度で、決して安くはない。白沢さんは「三十五才を過ぎると、後輩の若い女性が気になる。肌が衰えることで、仕事の能力も衰えたと思われたくなかった」ときっぱり。「顔を作り替える美容整形は、自己否定をするようで抵抗があるが、光線療法は本来の肌を取り戻せるところが気に入っている」と話す。
白沢さんが通う東京女子医科大学付属田端NSKビルクリニック(東京・北)には、月に六百人近くの女性が訪れる。「四十代以降が圧倒的に多く、会社の役員や大学教授などもいる」(若松信吾・同大形成外科・美容外科教授)という。
歯の美白や矯正治療を受ける働く女性も多い。東京都内の人間ドック専門機関の臨床検査技師、堀川さおりさん(26)もその一人だ。虫歯による前歯の黒ずみが気になっていたが、三月に、以前治療した虫歯が痛み出したことをきっかけに、黒ずみも取ることにした。
美白治療の効果で、すでに二本の歯が白くなり始めている。「うれしくて、毎朝、じーっと鏡を見てしまう」とにっこり。
治療は七月に終わる予定。虫歯治療に加え、特別な美白手法をとったため支払総額は百万円を超すが、「明るい気持ちで仕事ができるなら高くない」と思っている。
審美治療を始めて十年以上になるフォーラムデンタルクリニック(東京・港)の坪田健嗣院長によると、患者の大半が二十~四十代の女性で、週末には新幹線で来る人もいるという。治療費は、全部の歯を普通に美白して約八万円、歯列矯正で約八十万円だ。

これまでは男性のスポーツ選手が多く受けていた、レーシックと呼ばれる視力回復のための屈折矯正手術。この手術に、体質的にコンタクトレンズが合わない女性が着目している。カンナのような器具で角膜を薄くめくったあと、エキシマレーザーという紫外線の一種を角膜に照射し、光の屈折力を矯正する手法だ。
南青山アイクリニック(東京・港)では一九九七年の開業以来、二万件を超える手術をしてきた。うち女性は約四割に増え、とりわけ三十代が目立つという。戸田郁子院長は、「看護婦や客室乗務員のほか、事務職の女性も多く来院する」と話す。
手術費は両眼で約五十万円。一義的には近視の矯正が目的だが、同院の調査では、患者のまぶたの開き具合が、手術後一ミリ強広がる場合が多いという。目がぱっちりみえるようになるという副次的効果もあるわけだ。
これらの審美治療を受けた女性たちに共通するのは、「自分に自信を持前で明るく前向きでいたかった」こと。五年前、都内でPR会社を起業した加藤さんは、「自分の顔の気になるところを治し、生き生きと仕事ができるなら、効果はお金では量れない」という。
しかし、こうした気持ちの高揚効果を認めながらも、精神科医の町沢静夫さんは、「美の追求願望は際限がなく、取りつかれたようになりやすい」と懸念する。実際、屈折矯正手術を受けたあと白目の充血が気になって、白目も手術したり、顔のほかの部分の審美治療を始めたりした女性もいるという。
臨床心理士で立正大学助教授の宮城まり子さんは、閉そく感が強い今の時代は、キャリアの長期展望が描きにくく、表層的なものにお金をかける傾向が強まりやすい、と分析する。「容色を磨いても仕事をこなす力が高まるわけでない。一時的な幻想に踊らされず、仕事への意欲や自己研さんを持続させていくことが重要だ」と話す。
もっとも、働き続ける三十~四十代の女性たちは、より若い世代とひと味違い、そんなことは十分承知かもしれない。





日本経済新聞 2003年5月20日 夕刊 12面より


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