広がる再生医療 期待される実用化(18)

注入型培養骨で歯周組織再生  名古屋大学・上田研究グループ

40歳以上の成人の80%がかかっているといわれる歯周病。重症になると抜歯することもあるが、再生医療技術で自分の幹細胞を使って歯周組織を復活、そしゃく機能を取り戻す治療法の研究が進んでいる。名古屋大学医学研究科の上田実教授らの研究グループは、歯周組織が完全再生する技術をほぼ完成。現在、臨床試験に取り組んでおり、「早ければ07年にも実用化したい」(上田教授)としている。


雑菌で侵される

歯周病は歯茎、歯槽骨、歯根膜など歯を取り巻く歯周組織が雑菌で侵される病気だ。歯茎が炎症を起こし、症状が進行すると、歯槽骨が溶けて歯が抜ける。以前から再生療法の一つとして、細胞隔離膜を用いて歯周組織の再生に必要な環境を整え、成長を促すGTR(歯周組織誘導再生)法がある。しかし手術が煩雑で、症状によっては十分な再生が得られないことがある。
これに対して上田教授らが研究しているのは、患者の骨髄液から採取した骨再生のもとになる幹細胞を培養して、歯の周囲に移植、骨芽細胞に分化させて歯周組織の再生を促す技術。ベースになるのは注入型培養骨という骨再生の方法だ。
まず、患者の骨髄液から幹細胞を分離、培養。幹細胞の分化、増殖を促進する成長因子の血小板濃厚血しょうなどを混ぜて、注射器で生体の欠損部に注入する。注入するとゲル状に固まる物質を加えており、患部以外への拡散を防いでいる。動物実験の結果から、自家骨移植と同等の骨成形能力を持つことが分かってきた。


幹細胞に着目

幹細胞は組織再生の源といわれており、骨成形能力以外に歯根膜やセメント芽細胞に分化するポテンシャルを持っている。上田教授らは幹細胞のこうした特性に着目。歯周組織の再生に注入型培養骨を応用する可能性を探っている。
これまでに注入型培養骨を使い、歯周病のほかに人工歯根(インプラント)で炎症を起こし、あごの骨が欠けた患者らに培養骨を移植した。「平均すると、2カ月くらいで歯周病の症状が消えていく。かなりの重症例でも治るようになった」(同)とし、その効果を確認している。
注入型培養骨の最大の特徴は注射器で幹細胞、成長因子など必要な細胞を同時に欠損部に移植できることだ。これにより骨採取など移植のための切開手術が不要となり、局部麻酔での手術も可能になる。治療の肉体的負担から解放され、患者のメリットは大きいといえる。「今後は細胞の効率的な増殖方法、ロボット化による大量生産などを視野に入れ、将来の実用化につなげたい」(同)という。
かみ砕く機能に障害が起きると、食物摂取だけでなく、全身に影響が及ぶ。一般に「ガムをかむと頭がさえる」というが、実際、かむことで脳が覚醒化することが分かっている。歯牙喪失によって痴ほうになる危険率は、健常者の3倍に引き上がるという指摘もある。歯科領域での再生医療は高齢化社会の進展に伴い、ますますニーズが高まりそうだ。
上田教授は「歯科分野での再生医療研究は、ほかの組織、臓器に比べて進んでいる。特に、我々が研究している幹細胞医療は、これからの歯科医療の中心的な治療法になるだろう」と展望する。





日刊工業新聞 2003年5月15日 朝刊 5面より


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